本研究においては、ほぼ均一に高密度プラズマを発生可能なスーパーマグネトロン、プラズマ装置を用いてダイヤモンド状アモルファス炭素(DAC)膜を作製した。我々が作製したDAC膜は、金属を含まず良導電性の硬い炭素を主体とする膜であるので、真空フィールドエミッタ用材料に好適と考えられる。そしてこの導電性DAC膜を用いて1μm角に微細加工した薄膜状フィールドエミッタを作製し、電界放出特性を評価した。 先ず最初に、分子内に含まれる炭素原子数が多いイソブタン(i-C_4H_<10>)を用いて、DAC膜の高速成膜を試みた。抵抗率を下げるため、n型ドーパントとなるN原子の供給用のN_2ガスを添加し、繰返し堆積法により基板を冷却しながら堆積した。その結果、基板温度100℃、上下RF電力1kW/1kWの時、抵抗率が0.03Ωcmと大幅に小さく、バンドギャップが零となる膜が得られた。得られた最大膜厚は2.1μmとかなり厚く、その膜の硬度は、SiO_2の13.1GPaよりも硬く30GPa程度であった。FT-IRスペクトルの測定によりC-N、C=N、C≡Nの伸縮振動の吸収スペクトルが観測され、N原子が膜中に取り込まれている事が確認できた。 次に、この導電性DAC膜(n-Si基板上に堆積、膜厚0.05μm)を1μmドット形状に微細加工し、電界電子放出特性を測定した。電子放出の閾値電圧は10V/μmとかなり低く、得られた最大電流密度は約3mA/cm^2と十分大きかった。この研究により、フィールドエミッタの高性能化に導電性DAC膜が大変有効であることが実証できた。
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