研究概要 |
本研究では、コア層,クラッド層に、それぞれ液相成長(Liquid Phase Deposition : LPD)法によるフッ素添加酸化シリコン(SiOF)薄膜,有機スピンオングラス(SOG)薄膜を用いた薄膜光導波型熱光学デバイス(TOデバイス)の作製と特性評価を行っている。本研究では、TOデバイスの応答速度の向上を目的として、Ni-Cr薄膜ヒータの寸法微細化を検討した。導波路構造として、上部クラッド層をそれぞれ空気,有機SOG薄膜とした2層構造,3層構造について検討した。薄膜ヒータの加熱によりTEモードとTMモードの位相差が発生し、出射光の偏光状態が周期的に変化するため、45゜傾けた検光子を介して出射光強度の変化を測定した。 2層構造TOデバイスの応答時間は、薄膜ヒータ面積の減少に伴って小さくなり、薄膜ヒータ面積0.02mm^2で立上り時間,立下り時間が、それぞれ2.4msec,4.1msecとなり、消光比16dB,半波長電力2.78wが得られた。3層構造TOデバイスでは、応答時間が2層構造に比べて約2桁減少しており、薄膜ヒータ面積0.02mm^2で、立上り時間,立下り時間が共に2msec以下に改善された。この結果から、3層構造にすることによって導波光を薄膜ヒータ直下に通せるため、導波光幅や光軸ずれの影響などを低減できると考えられ、SiO_2薄膜を用いた従来のTOデバイスよりも高速動作が期待できる。また、十分なヒータ作用長を持たせるなど自由度の高い設計が可能な光学デバイスの作製が期待できる。
|