研究概要 |
シリコンデバィスが,電子の平均自由行程(100nm)より小さくなり,de Broigle波長に近づくと,キャリア輸送に関して量子効果を考慮する必要も出てくる.こうしたデカナノ領域でのキャリア輸送シミュレーションの研究を進めている. 今年度は初年度にあたり,量子効果を考慮したキャリア輸送に関して,形式的な量子理論構築だけではなく,有限温度でのフォノンの乱れを考慮した現実のデバイス特性解析に役立つモデルを構築している. 具体的には,デバイス特性を算出できる量子輸送解析の手法として,作用関数を用いて粒子を量子的に運動させるモデルの理論的構築に一応のめどをつけた.さらにモデルの理論的側面の完備と実用性の検討を終えたのち,手始めに2重障壁の電子の輸送計算を行うことによって,モデルの信頼性を評価し,有効性を実証する予定である. またグリーン関数を用いた量子輸送モデルについても試案中である.この他,量子ポテンシャルを用いたバランス方程式のデカナノ領域への導入についても検討中である. シミュレーション研究のためのデバイス実験としては,量子輸送が期待される十分に微細なシリコン細線をもつシリコンデバイスを作製した.このシリコンナノ細線デバイスの電気的測定からクーロン振動が観測された.これはシリコンナノ細線内部に2重(多重)障壁が形成されていることを意味している.今回,このクーロンブッロケイド効果を発現するSiナノ細線の形状についてTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳細に観察することに成功した.
|