本研究では、常温動作可能なサブミリ波検出器としてヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)構造を用いた検出器の開発を行った。 従来から用いられているショットキ・バリア・ダイオード(SBD)は、寄生容量や直列抵抗を極めて小さくできることから、5THz以上までの高い周波数の電磁波を検出することが可能であるが、本研究では、100GHz〜1THzの周波数帯において、SBDを上回る感度をもつ検出器を開発することを目的とした。 まず、Siバイポーラ・トランジスタを用いたマイクロ波モデルの結果に従って、直径5μmのエミッタをもつHBTの製作を行った。ベース・エミッタ構造を形成するためのフォトリソグラフィ、選択ウエットエッチング・オーミック電極形成などを行い、良好なベース・エミッタ電圧電流特性を得た。 次にコレクタ構造の形成に取りかかったが、選択ウエットエッチング行う際、電極周辺のエッチングむらが生じ、良好なトランジスタ構造を得ることが困難であった。そこで、ECRプラズマを用いたRIBEを試みた。エッチングガスには塩素を用い、イオンの加速電圧は200Vとし、半導体への損傷をできるだけ押さえてエッチング加工を行った。 製作したトランジスタの電圧電流特性を測定したが、リーク電流が多く、現在までに、十分なトランジスタ特性を有するものは得られていない。また、電圧・電流特性測定中に素子の劣化及び破壊が多く見られた。これらは、プロセス中にベース不純物の拡散が生じ、構造物劣化が生じたか、エミッタ電流が30mA程度になることもあり、急速に素子の劣化が著しく進んだと考えられる。 今後、本検出器を安定に移動させるためには、まず安定に動作するトランジスタ素子を製作することが必要である。現在のエミッタ電流が大きすぎることが明らかになったため、エミッタ電極を直径1μm以下のものにして素子の製作を行う予定である。
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