研究概要 |
本研究はウィスパリングギャラリモードで動作する誘電体円板共振器を間隔dを持って積層化し,その透過電力特性をミリ波帯での帯域通過フィルターに応用しようとするものである. 昨年度の研究により上記の構造により帯域通過フィルターを構築することが可能である事がわかっている.今年度はこの研究をさらに推進した.すなわち,昨年度の科学研究補助金で購入したミリ波ソースモジュール等を用いてミリ波帯での実験を行い,実験的にも帯域通過フィルターの実現性を明らかにした.この際,2枚の円板間の結合係数や励振用及び検出用外部回路と円板間の外部Q値をフィルター設計理論から得られるパラメータと比較検討しながら研究をすすめた.その結果,フィルターの中心周波数及び帯域幅を与える事により,所望のフィルターを実現することが可能となった. 昨年度の研究では2枚上下の円板共振器は全く同じ対称5層構造を扱ったが,ウィスパリングギャラリモードの性質により,所望する中心周波数の近傍にも帯域通過域が存在する事が実験的に明らかになった.そこで,今年度は上下,2枚の円板の半径は同じであるが、比誘電率と厚さが異なる非対称5層構造を理論的にとり扱った.比誘電率と厚さの決定には円板が単独に存在している場合について近似変数分離法を応用し,そして所望する中心周波数でのみ2枚の円板がともに共振するようにそれらを決定した.理論的にはこれらの決定方法は現時点で確立しているので,今後は実験的に非対称5層構造を取り扱い,優れた帯域通過フィルターを構築する予定である.
|