研究概要 |
電子回路基板は線路としての導体系と,受動素子,能動素子を含む回路素子とが混在して構成されており,電磁放射は主に線路等がアンテナとして動作するために発生すると考えられる.基板に装荷された回路素子がその特性に大きく寄与し,特に非線形回路素子による高調波の発生は電磁放射特性に大きく影響を与える.一方,非線形現象は一般に物理的イメージが捕らえにくいと同時に,不要放射に最も重要な寄与をしている部分の抽出が極めて困難である.これを防ぐには電磁波の時間的な挙動を追いながら解析するのが効果的であり,FDTD(時間領域差分)法を用いた解析が有効である.基板上の線路をアンテナと考えて,それからの放射を精度よく解析するための方法を確立した.具体的には,誘電体近傍では電磁界の変化が急激であるため,共振周波数などを極めて厳密に求めようとするとFDTD法はセルサイズを大変細かくする必要がある.そのため,多くのメモリと計算時間を必要とする.これを改善する方法として申請者らは,アンテナ導体近傍での準静近似を用いたFDTD法により,誘電体基板上アンテナの高精度化方法を提案し,更にこの方法をFDTDセルを斜めに横切るような曲線形状を持つモデルに対して適用しその有効性を示した. また,回路基板からの不要放射を測定するには,有限距離において波源推定を行う事は有効であると思われる.優れた波源推定特性を持つMUSIC法を用いて有限距離における推定を行った.一般にMUSIC法は遠方からの平面波を入力とするが,推定の際にモードベクトルに変更を加える事で平面波ではなく,有限距離波源からの放射である球面波に対して推定を行う方法を検討した.又シミュレーションにおいては,点波源,半波長ダイポールアンテナ,ライン線路放射界の有限距離における放射界について検討を行い,推定を行う事が可能である事を示した.
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