本年度の成果は次の2項目である。 1 可算無限アルファベットの情報源に対するユニバーサル符号化アルゴリズム有限アルファベットに対して従来提案されていた2種のLempel-Ziv符号を可算無限アルファベットの情報源に対して適用する方法を提案した。提案した方法は、これら2種の符号において、情報源から出力された記号をそのまま符号語として出力する際にEliasのγ符号を用いるという方法である。次に、提案した2種のアルゴリズムによって符号化を行った場合、1記号あたりの符号長がエントロピーに漸近する為に情報源が満足すべき十分条件を明らかにした。これらの十分条件は、可算無限アルファベットを有する情報源に対するユニバーサル符号の存在条件に含まれており、今後、より緩い十分条件を探す予定である。 2 大規模アルファベットを有する情報源に対する実用的な算術符号化法の提案大規模アルファベットを有する情報源に対する高速な算術符号化法として、YangとJiaによるMultilevel Arithmetic Coding (MAC)が知られていた。MACでは、情報源を無記憶とみなして符号化を行っていた。そこで、MACの各層(レイヤー)において文脈を利用した符号化を行うことで、記憶を有する情報源を効率的に圧縮できるように改良を行った。実際に改良したMACをパーソナルコンピュータ上に実装して計算機実験を行ったところ、MACに比べ計算時間が1.5倍程度に増加するものの圧縮率では10%程度の改善が得られることが分った。また、高性能な圧縮プログラムとして知られるbzipに比べても数%程度の圧縮率の改善が見られ、提案方式の有効性を確認した。
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