研究概要 |
ディジタル画像に電子透かしを埋め込んで著作権保護を有効に行おうとするときには,透かし情報を画像から分離できないようにし,また,切り出された部分画像からも透かし情報を復元できることが求められる.このためには透かし情報を画像全体に分散して埋め込む必要がある.本研究の初年度ではまず,反復関数系局所フラクタル変換を用いて画像を生成するときに,埋め込んだ情報がどのように分散されるかを検討した.画像はフラクタル変換パラメータを反復して用いて生成されるため,この反復の過程で情報が画像上に伝搬していく場所と振幅の変化を理論的に解析した.更に,実際の自然画像から得られたフラクタル変換パラメータを用いて,パラメータ上に与えた情報が反復によって画像上に伝搬していく様子のシミュレーションを行い,その結果,理論特性に近い伝搬特性が得られていることを示した. 一方,局所フラクタル変換では対象画像に最適な変換パラメータの値を求めるときに,レンジブロックとドメイン領域(ドメインブロックの集合)との間でブロックマッチングを行う.ブロックマッチングを行うときの評価関数(ブロック間の距離)に各画素間の2乗誤差のブロック内総和を用いるアルゴリズムについて,これまでに,処理時間を短縮するための間接判定法を提案している.本研究の一部として,高速ブロックマッチングアルゴリズムとして知られている残差逐次検定法に対して,この間接判定法を適用したときに得られる高速化の効果を検討した.間接判定法の高速化効果を間接比較が成立する割合(間接判定率)に基づいて評価すると,間接判定率が大きければ大きいほど処理時間が短縮される割合がより大きくなることが,シミュレーションによって示された.更に,このときの高速化効果の特性を細かく分析し,高速化が実現される根拠とその条件とを明らかにした.
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