研究概要 |
本研究は,情報ストレージ装置の高密度化を実現するために必要なPRML (Partial Response Maximum Likelihood)方式と呼ばれる信号処理方式の性能向上に関するものである.本研究では,ジッタ性媒体雑音が支配的な垂直磁気記録再生系において有効なPRML方式を開発することを目的として,計算機シミュレーション及び記録再生実験の両面から検討を行った.その結果,以下の成果が得られた。 1.自己回帰(AR : Autoregressive)チャネルモデルによるPRチャネルのモデル化 ジッタ性媒体雑音は磁化転移点の変動に起因して発生することから,信号系列に依存し,かつ,雑音系列間に相関のある有色雑音となる.この性質は,信号に対して有利な波形等化を行ったあとでも維持される.そこで,垂直磁気記録におけるPRチャネルの実波形及び数値モデルによる再生波形を用いて,ARチャネルモデルによりPRチャネルのモデル化を行ったところ,良好なモデルが得られることが明らかとなった. 2.ARチャネルモデルのビタビ復号器への適用(PRML-AR方式) ビタビ復号における各状態遷移に対する推定値をARチャネルモデルを用いて求めるPRML-AR方式を提案し,最尤パス選択の精度を向上させることで復号器の性能改善を行った.さらに,ターボ復号器を構成するAPP (A Posteriori Probability)復号器への適用についても検討したところ,性能改善が得られることが明らかとなった. 3.垂直磁気記録におけるPRML方式の誤りパターンの解析 PRML方式,PRML-AR方式の誤りパターンついて検討し,ジッタ性媒体雑音による誤りパターンの変化を明らかにした。 4.PRML-AR方式とポストプロセッサによる性能改善 PRML-AR方式における支配的な復号誤りをビット単位で訂正するためのパリティ符号化,ML復号器における信頼度演算,ポストプロセッサについて検討し,ほとんどの復号誤りを訂正でき,大幅な性能改善が得られるが明らかとなった.
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