本研究ではMRIデータから構成する独自の声道の3次元有限要素法(FEM)を用いる音響解析法を開発している。口腔や咽頭の形状などの特徴がどのように声質や個人性に及ぼすかについて定量的に評価できるためのシミュレーション・アルゴリズムを開発していた。 従来のFEM解析法では形状データから作られる連立一次方程式の係数マトリクスをコレスキ分解などによって直接解を求めて行く方法が用いられて来た。従来の方法の問題は、計算時間が非常に長く音響解析を多くの形状条件を変化させて検討してゆくことが困難であった。 これに対して本研究では、並列アルゴリズムに適したプレコンディショニング付き逐次近似法を導入し、50Hz程度の低い周波数から8KHz程度の高い領域までの声道伝達関数を高速に求める方法を検討した。新しいアルゴリズムの開発に成功し、従来の方法より5倍から10倍の高速化が可能であることを示した。
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