研究概要 |
スピーカとマイクの間に音響的フィードバックのあるhand-free移動体電話やテレビ会議システム等では,空間内におけるスピーカから出力された音声信号が,壁等に反射して引き起こされたエコー成分により,通信音声の質が著しく劣化する. 先に研究代表者は共同研究により,ダブルトーク時においても係数更新を実施し得る相関アルゴリズムに基づくエコーキャンセラを開発し,その有効性を計算機シミュレーションで検証した.しかしながら,計算量の低減化およびスピーカの非線形特性の取扱いなど,実際的な問題に付いては言及していなかった. 本研究では,エコーキャンセラの入力信号を格子型フィルタに通し,すなわち,入力信号を後向き予測誤差に線形変換することにより,演算量を大幅に削減することができるアルゴリズムを開発した.また,そのアルゴリズムの有効性を計算機シミュレーションにより明らかにした. 次に,アレーアンテナを用いた到来角推定アルゴリズムを提案することにより,マルチパスを各パス毎に分離するために必要となるアルゴリズムを開発した.このことにより,部屋のインパルス応答の長さが,並列した短いインパルス応答の長さになることから,計算量の削減が可能となった. 更に,スピーカによる非線形性を考慮するため,未知システムのインパルス応答をボルテラ級数で展開した非線形特性と仮定しフィルタ構築を行い,より実際的なモデルにも対応できるエコーキャンセラを設計した.また,観測信号からのみ非線形システムを同定できるようにするため,高次統計量を用いたブラインド同定法を開発し,その手法の有効性を計算機シミュレーションにより明らかにした.
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