本研究の目的は、日本語で使用する文字(ひらがな、カタカナ、漢字)を対象とし、少数の手書きを文字からその筆者の"くせ"を抽出して、それをもとに、任意の文字種に対して筆者の"くせ"を反映した文字フォントを自動生成するシステムの製作にある。今年度は、まず手書き文字のどこに個人性があらわれるかを調べるために、多数の手書き文字を収集し、目視による比較をおこなうことからスタートした。その結果、一文字分の大きさ、及び歪み具合に個人性があることが明らかになった。歪み具合とは、縦長、横長、丸文字、角張った文字、斜めに傾いた文字などを全て含んでいる。そこで、これら2種類の個人性特徴を標準的なペン字フォントに付加することで、個人のくせを反映した手書き文字フォントを自動生成するアルゴリズムを完成させた。そのアルゴリズムに基づき、パーソナルコンピュータ、イメージスキャナ、インクジェットプリンタにより構成される「くせ字フォント自動生成システム」のソフトウェア開発を開始し、そのβ版を完成させた。構築したシステムは大規模なシンポジウムや展示会などでデモンストレーション機として出展し、合計100人以上の被験者に試してもらった。反応は極めて上々であった。今年度の終わり頃には多数の新聞・雑誌にも取り上げられ、一般社会における本研究の注目度の高さをうかがい知ることができた。
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