研究概要 |
近年のワープロの普及により,誰でも美しい文字を書くことができるようになったが,その一方で,画一的なフォントに不満を抱いている人問もまた多く存在している.もし,個人のくせを反映した文字フォントが作成できれば,コミュニケーションにいくらかの暖かみを加えることができるであろう.そのような考えのもと,本研究では,ユーザーがペンを用いて書いたときの個人のくせを反映した任意の文字フォントを自動的に生成する手法を提案した.具体的にはまず,ユーザーに筆記してもらった文字群をイメージスキャナにより計算機に入力する.計算機には既に標準となるペン字体フォントが内蔵されている.そして,その標準文字フォントと入力文字との間でいかなる幾何学的変形およびスケール変換が行われているかを解析し,ユーザーの個人のくせを抽出する.この文字変形ルールを逆に標準文字フォントに対してかけてやれば,任意の文字種に対して個人のくせを反映させた文字を自動的に生成できる. 提案するアルゴリズムを実装した「くせ文字フォント自動生成システム」を開発し,性能評価を行った.ここでいうシステムとは,スキャナで取り込んだ手書き文字から個人の"くせ"を抽出し、それをもとに、キーボードで入力した文字に対して個人の"くせ"を反映させてディスプレイ表示するかあるいは印字できる装置を指す.実際に多数の被験者に筆記してもらった手書き文字から,その被験者らのくせを反映した文字フォントを出力し,目視による比較や定量的な検討をおこなうことで,そのアルゴリズムの有効性を確認した. また,研究成果は新聞・雑誌等に数多く紹介された.さらに,成果は直ちに企業へ技術移転され,平成15年2月にソフトウェアの商品として販売開始された.
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