本年度は光無線通信を用いた移動体通信に関し、室内光伝搬特性の取得、移動体通信を考慮した巡回型発光方式の提案及びその評価を行った。以下にその詳細を示す。 1 室内光伝搬特性の取得 室内での光無線を考えた場合、窓や壁による反射により直接波及び反射散乱波成分の正確な強度並びに遅延度合いが重要である。本研究では実際に室内において発光素子を用いて光伝搬実験を行った。具体的には発光素子としてLD(レーザー ダイオード)を用い、APD(アバランシェ ホト ダイオード)で受光し、各種の特性を測定した。測定にはネットワークアナライザを用い、2GHzまでの帯域での周波数成分の信号を光強度変調し、受信し、逆フーリエ変換によって遅延プロファイルを測定した。この実験により数nsecオーダーでの分解能に基づく光信号遅延プロファイルが明らかになり、反射、散乱成分の強度、およびその遅延度合いを明らかにした。現在、窓の反射等、様々な観点での特性の変化を求めており、その結果は近く。学会において発表を行う。最終年度にあたる来年度は外と中の明るさの違いによる、反射、散乱の違いを求め、具体的な特性に基づく光室内伝搬の理論モデルを構築する。 2 移動体通信を考慮した巡回型発光方式の提案及びその評価 遮蔽の問題から一般的に光は移動通信に適さないと言われているが、本研究で提案する巡回型発光方式は、時間/空間ダイバーシチの概念を取り入れたもので、遮蔽状況が発生してもシステムとして通信確保可能となるような制御を可能とする。本研究では提案方式の具体的なパラメータをシミュレーションを元に求めた。また、既存方式であるサイトダイバーシチ方式との比較を行い、符号間干渉の観点からも、提案方式が優れた特性を示すことを明らかにした。本研究成果は現在、電子情報通信学会論分誌に投稿中である。最終年度である、来年度では更に、逆方向での伝搬の可能性や特性を求める他、具体的な複数局をサポート可能な発光方式に関して研究を行う予定である。
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