信号処理や通信の分野に於いて、離散的フーリエ変換(DFT)やたたみ込みを効率良く計算する手法が重要である。DFTを高速に計算するアルゴリズムとして、高速フーリエ変換(FFT)が良く知られているが、この研究では多項式の再帰的因数分解に基づく手法を一般化する。複素数演算を必要としない、変換長が2のべき乗でない場合にも適用できる再帰的因数分解高速アルゴリズムを開発した。このアルゴリズムは多項式1-z^Nに対する再帰的因数分解に基づくもので、長さがNの信号をX(z)とすると、多項式1-z^Nに対する再帰的因数分解の過程に従って、X(z)の剰余多項式を順次求めることで、計算の高速化を図っている。 平成14年度では、以下のような事柄を主に行った。 (a)Nが2のべき乗でない正整数として、多項式1-z^Nの実数多項式の再帰的因数分解法を求め、その分解の過程に従りて、X(z)の剰余多項式を順次求めた。この方法に従い、シミュレーション実験等を行い、その計算効率を実験的に確認した。また、この手法の計算効率を解析的に求め、WinogradやRaderなどの変換長が2のべき乗でない場合でも適用できる他の高速計算アルゴリズムと比較し、提案する手法の有用性を理論的に確認した。 (b)上記で得られた成果を主要な国際学会の論文として発表可能な形式としてまとめた。その原稿はIEEE Tr. on Signal Processingの論文として採録された。
|