本研究は、歩行しながら行う現行の人道的地雷探知除去作業をより安全に効率的に行うための画期的な方策として「埋設された対人地雷を起爆させることなく地雷原を安全に走行できる作業移動型ロボット」を開発することを内容としている。従来の移動方式(車輪型、クローラ型、多脚型歩行)は対地接触面積が小さく接地圧力が大きいため埋設対人地雷の起爆感知力をはるかに越えることから、これに代わる移動方式として、本研究では「対地適応性・重量物可搬性の高い斜毛駆動による毛状多足型移動方式」を新たに開発した。この方式は、「車輪・クローラ・脚等」の代わりに数万本の斜毛を配し、円筒カム型斜毛駆動機構によって斜毛群に蠕動的運動を与え、斜毛の順方向と逆方向移動時に発生する接地摩擦力差を利用して移動する安定低速型の走行方式である。その実現可能性を試作機(自動35kg、斜毛本数10万本、直径0.6mmナイロン製斜毛)による実証実験でまず確認し、起爆感知力が最も小さいとされる対人地雷PMN2を想定した実機設計を行い、以下に示す仕様をもつ作業移動型ロボットを開発した。仕様:最大可搬重量120kg、自重480kg、総重600kg、斜毛本数4万5千本(直径2.5mm、長さ430mm、材質ポリエステル)、全長3.52m×全幅1.66m×全高1.2m、作業床面高さ0.7m。4万5千本の斜毛への重量負荷分散により接地圧力を90g/cm^2以下に、対人地雷への負荷力を2.5kg以下に抑えることを可能にし、起爆感知力が5kg以上の対人地雷(PMN2相当)に対して、これを起爆させることなく走行できる作業移動型ロボットの実現が基本的に可能であることを明らかにした。開発したロボットは、ガソリン発電機・主電動機により主軸円筒カムを回転させ左右に配置した斜毛群によって走行し、走行速度は分速4m、前進・後退・左右への旋回及び信地旋回も可能である。柔軟な斜毛による接地移動により、最大踏破段差高さは約12cm、凹凸地面走行に強いことが確認された。
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