研究概要 |
本研究の目的は,工業製品の機能的多様性と構造的類似性の観点から新たな設計論を提案するとともに,幾つかの具体例を示すことによってその有用性を実証することである.工学的な設計問題は,目的関数空間(機能)から解空間(構造)への逆写像として捉えることができ,通常,与えられた仕様(機能)を実現しうる構造(解)は幾つも存在する.そこで,二つの解の間で構造と機能の差異を表わすための適切な距離関数が導入できれば,複数の解候補の解空間における構浩的な類似性と,それらの目的関数空間における機能的な多様性が定量的に評価できる. 今年度は,集積回路の実装設計における「モジュール配置問題」,フレキシブル生産システムにおける「資源分割問題」,冗長ロボットアームを用いた組立作業における「最適姿勢問題」を実例とし,解の多様性という観点から各問題の定式化とメタ戦略による求解を試みた. 1.モジュール配置問題 総配線長の最短化を目的とした従来のモジュール配置問題を,すべての最適解を列挙する探索問題として捉え,遺伝アルゴリズムを適用して複数の最適解を求めた.これにより,設計者は得られた解を比較することで,配線長には反映されない電気的特性などを考慮できる. 2.資源分割問題 配分される資源間の関連性に着目することで,資源分割問題を多目的最適化問題として定式化した.さらに,種の棲み分けを模擬した遺伝アルゴリズムを適用することで,多目的資源分割問題に対してパレート最適解集合を求め,個体間の距離に基づき最適解の多様性を評価した. 3.最適姿勢問題 無数に存在する冗長ロボットアームの逆運動学問題の解(姿勢)から,手先コンプライアンスを非干渉化するようなロボットの姿勢を求めた.これにより,能動的なフィードバック制御系を構築することなく,受動的に手先コンプライアンスの非干渉化が可能であることを示した.
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