研究概要 |
本年度は以下の3点について研究を行い,2件の学術雑誌論文・3件の国際会議論文として成果を発表した.まず,コーンビーム(マルチスライス)ヘリカルCTにおける検出器素子の配置法やらせん状スキャンの方法としてどのようなものが効率的かという最も基本的な問題を数学的に考察し,検出器素子を効率に配置し高速なスキャンが可能な新しいデータ収集方式を考案した.次に,筆者らがこれまでの研究で開発してきたコーンビームCTの数学的に厳密な画像再構成法をコーンビームヘリカルCTに拡張し,高精度で計算量が比較的少ない2つの新しい画像再構成法を開発した.これらの新しいデータ収集方式と画像再構成法は,数年後に実用化が期待されている大きな2次元検出器を用いて高速なスキャンを行うマルチスライスヘリカルCTの核となる重要な成果であると考えている.そして,本研究費で購入したワークステーション(コンパック社製XP1000)を用いて提案手法を実装してシミュレーション実験を行い,解像度・アーティファクト・計算量・雑音特性の観点からその性能評価を行った.最後に,他の研究グループによって最近発表された画像再構成法のうち処理の簡便さから実用化が期待されているASSR(Advanced Single Slice Rebinning)法とSSRB(Single Slice Rebinning)法を実装し,提案手法との比較を行った.その結果,特に大きな2次元検出器を用いて高速なスキャンを行った場合において,提案手法により圧倒的に優れた精度が達成できることを実証した.来年度は,本年度の基礎的成果に基づいて実用的な研究を行うことと新しい数学的枠組みに基づく画像再構成法の検討を行う予定である.
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