研究概要 |
本年度は以下の3点について研究を進展させ,2件の学術雑誌論文・3件の国際会議論文・1件の国内会議論文・1件の解説論文として成果を発表した.まず,汎用のコーンビームヘリカルCT装置に用いる実用的な解析的画像再構成法として,昨年度開発したCT画像再構成の新しい枠組みであるSuper-Short-Scan再構成法とJohnの方程式に基づくRebinning法を基本原理として,2つの新しい近似的画像再構成法を開発した.そして,シミュレーション実験により,これらの画像再構成法が体軸方向コーン角度が大きな場合にも精度の低下が少なく近似法であるため計算量も少なく,総合的に計算量と精度を両立した優れた画像再構成法であることを実証した.次に,アンジオグラフィーなどの高コントラスト物体のイメージングを目的としたコーンビームCT装置に用いるため,昨年度開発した少数方向コーンビーム投影データから血管の3次元構造を再構成する画像再構成法に性能や計算量の点での改良を加え,昨年度の方法では不可能であった4方向投影データから細かい血管の3次元構造を高精度で再構成できる見通しを得た.改良した画像再構成法は,血管像などの疎物体の画像再構成を線形計画問題として定式化しそれを双対座標上昇法と呼ばれる数理計画の手法で解く原理に基づいている.最後に,この血管像再構成法をマルケット大学で開発中のマイクロCT装置に実装し,8方向投影データから一辺が2cmの立方体程度のラット肺血管を正確に再構成することに成功した.
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