研究概要 |
次期地球観測人工衛星ALOS-PALSARにおける新たな3次元観測手法の一つとして,今年度は,森林領域の3次元観測手法について検討し,そのアルゴリズムの開発を行った.この提案手法はL-Band帯のインターフェロメトリ(干渉)SAR観測に適用されるものであり,2枚のSAR画像の個々のピクセルにおいて,森林樹冠内の散乱中心と森林を透過し地表面において散乱される電磁波の散乱中心を分離検出することにより,森林の3次元構造(森林高),さらにはバイオマス量の推定を可能とするものである. 同種の手法として,フルポーラリメトリック(例えばHH, HV, VV)観測において適用可能なPolarimetric SAR interferometryが存在するが,この研究において開発した手法は,超解像法として知られるE SPRIT法を応用したものであり,画像データに含まれる散乱波の統計的な性質を利用することにより,近接した物理的な散乱中心を分離し,その位相差を直接導出するものである.特別なパラメータマッチングなどを必要としないため高速な処理が可能で,かつ2偏波(HH, VV)以上で適用可能という特徴を有する.このような特徴は既存の手法には実現されていなかったものである.特に2偏波での適用可能性は,幅広い陸域のカバーが計画されているALOS-PALSARの2偏波モードにおいて威力を発揮するものと期待される. 今年度は,SIR-C/X-SARおよびE-SARデータでの実証実験に加え,実験室ベースでの散乱モデル実験による精度検証システムの構築を行った.樹冠を模擬したランダムダイポール層および地表面に対応する平板からなる森林散乱モデルを構築し,様々な入射角度でのフルポーラリメトリック実験を可能とするシステムを構築し,正確なモデル実験を行うための種々のモデル設定パラメータに関する検討を行った.次年度は,これらのパラメータを用いた実証実験を行う予定である.
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