複雑事象系を解析するには、多変量解析を導入したり神経回路網による記憶学習を導入するなどしてオブジェクト間の相関関係を抽出するだけでなく、いわゆる推論を一貫して扱えるような堅固な論理を導入しオブジェクト間の因果関係を強力に抽出することが一つの鍵となる。本研究では、因果関係を解析するための基本技術として、2進小数を直接的に真理値の形で符号化するブール多値論理を定義し、推論への応用方法を示すとともに、自然言語化の可能性も検討した。多値論理は因果関係を解析する際の基本技術として重要であり、特に、論理式の全体集合がブール代数をなすブール多値論理は、伝統的なブール2値論理において得られるいろいろな知見を継承し、論理的な解析の見通しを良くする。いろいろな論理が多値論理とよばれているが、本研究では論理式が2通りより多くの真理値をとるような論理のみを多値論理とよんでおり、ブール2値論理の論理式に荷重やコストが付加された多くの多値論理、例えばベイズネットワーク、確信度、Dempster-Shafer理論などは、多値論理には分類していない(なぜなら、荷重やコストが多値をとっても、論理式そのものは2通りの真理値しかとりえないからである)。具体的には、0以上1未満の2進小数を直接的に真理値として符号化することによって、論理式の全体集合がブール代数をなすブール多値論理を定義し、これを運用するための基本的なC言語プログラムを開発した。提案論理は、前年度に準備したブール多次元論理と同じく相補ファジィ論理の一実現であるが、前年度版が高速化された構成原理に基づいており、より自由度が低いかわりに扱いやすくなっている。
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