平成13年度の研究では、おもに、成長に伴い口腔形状が変化する小児を対象とした実際例の調査を進めた。例えば低年齢児の顎関節症状の原因として不正咬合と異常習癖が考えられており、本研究における調査で、習癖が原因と思われる低年齢児の顎関節症状が収集できた。これらの実データを計算機解析する際、従来の多変量解析法等を用いる方法論は、原因要素間の相関関係を示唆してくれるものの因果関係までは解明できないので、かわりに、複雑事象系に潜む微妙な因果関係を抽出する方法として、研究代表者の発案によるところの多次元ブール論理に基づく因果関係の計算機支援解析法を、論理の一貫性を保持するC言語プログラムの形で開発した。平成14年度の研究では、因果関係を解析するための基本技術として、2進小数を直接的に真理値の形で符号化するブール多値論理を定義し、推論への応用方法を示すとともに、自然言語化の可能性も検討した。提案論理は、前年度版が高速化された構成原理に基づいており、より自由度が低いかわりに扱いやすいものとなった。さらに、副次的成果も2つあった。自律神経の状態を知るため瞳孔反応を調べるが、既製の電子瞳孔計は近赤外線を眼球に照射するので、被験者に目の渇きを感じさせる、白内障を引き起こしうる、装置が複雑であるなどの問題を抱えている。そこで、非赤外線方式すなわち通常の可視光を用いる方式の瞳孔抽出および瞳孔径計測技術の開発を試み、原理的な実現に成功した。また、口腔状態を計測する補助手段として、特に高周波を多く含むどちらかといえば非定常性の強い音声を周波数領域において解析するための方法の開発を試み、今後本格的な研究へと発展する基礎となる程度の成果が得られた。
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