本研究は、生体媒質等の小さな体積の試料における音響非線形パラメータ」B/Aの分布を、高周波集束音波を利用して映像化する装置の実現を目指している。まず、前に本研究者が提案したB/A測定法を高周波に適用できる方法に改変し、その有効性を低周波において検証した。次に、この実現のため、ニオブ酸リチウム圧電板の熱処理による分極反転現象を利用し、また励振電極形状を適切に加工した構造の集束型送受波器を試作した。分極反転圧電板に、30ポイントで、外周に向かうに従い最大36°捩れた星型電極を施すことによって、解析が容易なガウス・ビームが放射され、1次だけでなく、2次共振においても径方向にガウス関数状の送波・受波感度分布を得た。この圧電板を、固体音響レンズに接着して集束ガウス・ビームを形成させた。この送受波器を利用して、基本波および第2高調波の映像化装置を構築した。送受波器をx-yステージに搭載し、これで試料への音波の照射を、一例として0.15mm間隔で20×20の2次元走査した。試料は、送受波レンズに対向して置かれたタングステン・ロッドの光学研磨した先端に真空吸引して密着され、試料を透過し、ロッド先端で反射して再び試料を透過する音波が受信される。厚さ1mmの生体試料の3mm四方を映像化した結果、同一の基本波振幅でも非線形第2高調波の振幅が異なる部分があり、B/A値の場所的不均一性が示唆された。本装置にはなお不備があるが、改良によってB/Aの映像化が可能であると考える。このような系で非線形音響出力等の映像化を行うと、線形の場合とは全く異なった映像が得られる。この原因について、本研究では、集束による非線形性の増大と音波の回折効果を考慮した第2高調波音波の伝搬を解析によって考察した。その結果、第2高調波では回折に伴う位相回転により、基本波と異なる映像となり得ることがわかった。
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