金属薄膜表面からのブリユアン表面凹凸散乱を測定できるように散乱光集光用の光学系を改良した。とくに表面測定用に入射光の精密な軸合わせ機能を検討し、シリコン基板上を伝搬するレイリー波のブリユアン光散乱の測定ができるようになった。散乱光のフォトンカウンティング部分についても、微弱な信号を効率良く測定するためカウンティング時間の調節を行い、適切な測定時間を決定した。 改良された光学系を用いて、分子イオンビーム法でシリコン基板上にヘテロエピタキシャル堆積されたSiC薄膜試料(膜厚、数nm^-十数nm)上を伝搬する変形レイリー波の測定に成功した。RHEED測定より推定される構造の異なる2試料(立方晶系、正方晶系)の変形レイリー波音速が異なることを確認し、特に正方晶系の薄膜では音速が明確に低下することを確認し、nmオーダーの薄膜でもバルク材料と同様なせん断弾性率の低下がみられることをはじめて指摘した。このような薄膜材料の弾性的性質は従来の機械的測定とくに硬さ測定では困難である。ブリユアン光散乱法を用いることで、相対的ではあるが弾性率変化を非接触・非破壊測定できることを示した。 PE、PPなどの高分子フィルム(膜厚50μm)のブリユアン散乱測定を行い、散乱光測定の精度を向上するため、サンプル支持部の光学窓の改良を行った。また、透過型の90A散乱配置が可能で、常温か300℃まで測定可能な温度制御装置を試作設計した。制御装置内の温度分布を測定すると共に、温度安定度が0.1℃程度となるよう、制御プログラムを設計・改良した。
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