研究概要 |
本研究では,物体の表面の性状をオンラインで非接触計測する方法として,パターン投影法と,レーザ光の散乱における回折像の利用方式について,平行して研究を進め,相互の関連性をも明らかにする。 パターン投影法とは,通常光源の照明により,一定のパターンを対象物表面での反射を経由して,観測面上に投影し,この投影像のコントラストなどのパラメータを計測する方法である。レーザ光回折像方式は,表面からの散乱における回折像の分布形状が,表面の性状により決まる現象を利用する方法である。 前年度までの研究により,パターン投影法では,中心線平均粗さRaが0.1μm以下の範囲で,観測されたコントラストとRaの関係が,一定の実験式で表されることを筆者らは見出していた。またこの実験式が、対象物表面を含めた結像系の光学的伝達関数により決まることを理論的に検討した。計測のオンライン化のためビデオカメラを測定に用いた場合には、実験式で表される関係から比較的大きな偏差が現れることがわかり,濃淡画像に輝度補正画像処理を加えることを提案し,また上記の偏差がビデオカメラの暗電圧により生じていることを見出し,補正処理の有効性を明らかにした。 またレーザ回折像利用法では,前年度の研究にて,回折像の包絡線形状を,回折像分布の中心位置でのデータと,他の1点のデータにより分布曲線を推定できること,ならびに分布形状の積分値が,中心線平均粗さが0.06μm以下の範囲で,Raとよい相関性を持つことを見出した。本年度の研究において,回折像の縦方向と横方向分布の積分値により,表面粗さの大きく異なる表面でも表面上の欠陥の形状の分類ができることを示した。 上記のレーザ光の反射回折像の積分値と粗さの相関は,Raの小さい領域では,パターン投影法での実験式とほぼ同じであり,金属の場合と他の材質の場合の粗さとでは,光沢や色彩の関係での相違が,ある程度明らかとなった。2つの測定法の組合せの効果については今後の課題である。
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