観測信号から音源の方位や位置を同定することは、音声認識やシステム同定における精度の向上、ANCなどの騒音対策、音による異常検出など様々な分野において非常に有用である。本研究では、マイクロホンアレイにより受信される信号情報を用いて音源方位・位置を推定する手法をいくつかの観点から提案する.とくに、源信号の統計的独立性に基づいた推定法を検討した。各年度の研究成果は以下のとおりである。 平成13年度(2001年度):第一の手法として、各マイクロホンの受信信号から相関関数によりマイクロホン間の信号の遅れ時間を求め音源方位を推定する.つぎに、音源の方位を極めて高い分解能で推定できるMUSIC法を用い音源方位を推定し、そして各マイクロホンで受信される信号の振幅情報により音源位置を推定する.またこの振幅情報は雑音の影響を強く受けるので、カルマンフィルタを導入して雑音成分を除去し推定精度の向上を図る. 最後に、複素狭帯域化した時間差混合信号にブラインド分離を施し、その結果を利用して、音源と受信点間の遅延時間を推定することにより音源位置・方位が推定できる。複素信号のブランド分離に関しては、複素Hermiteモーメントとユニタリ変換を利用した手法を以前に報告しており、それが利用できる。さらに、推定パラメータを用いて源信号の高音質な分離・再生法も可能となる。 平成14年度(2002年度):前年度のブラインド分離に基づく原理的な音源位置推定法について、詳細なシミュレーションを行った。その結果、無限遠点にある音源に対して方位推定が可能であるとともに、推定パラメータを用いてオーバーオールで源信号の分離が可能となることが分かった。これらの結果を、国内外の学会や研究会で発表した。
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