平成13年度は、(1)開発したプローブ顕微鏡に大型放射光施設SPring-8で得られる強力なX線を導入し、半導体表面の特定元素の内殻励起と価電子状態の相互作用を、静電容量を介して観測できることを見出した。(2)プローブで局所静電容量を測定しながら照射するX線のエネルギーを変化させることで、表面元素のみのX線吸収スペクトル(X-ray absorption fine structure ; XAFS)が測定できることを初めて実証した。これにより元素種のみならず化学状態の違いでもプローブ顕微鏡像にコントラストがつくようになった。(3)探針に加える電圧を制御することで任意のサイトの化学状態を選択的に観測できることを示した。(4)応用例として、トランジスタ心臓部ともいえるnmオーダーの電気伝導領域(チャネル層)の化学情報を選択的に観測することに成功した。 平成14年度は、(1)開発した装置を使い、様々な試料のXAFSを観測し、当初の目標通り表面「元素」像が観測できることを実証した。(2)代表例として、半導体表面極薄酸化膜の電子捕獲中心の元素組成と構造の決定に成功した。(3)プローブを使って、ミクロ領域の構造情報と電気特性の同時取得に成功し、両者の対応付けを可能にした。(4)埋め込み量子ドットに本手法を適用し、その界面電子構造を解明した。微小量子構造内部の特定部位のみの選択解析は他手法では不可能であり、ナノ電子デバイス特性の特性を分析・制御する上で重要な新情報を得ることができた。(5)得られるスペクトルが分子軌道計算による理論計算からも分析できることを示し、測定の信頼性を向上させると共に、汎用利用に不可欠な分析手順の定石を確立した。
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