研究概要 |
今年度は,2自由度リニアモータと可変インピーダンス制御に基づくインピーダンス・トレーニングシステムを新たに開発し,このシステムを用いてトレーニング中の健常者の筋インピーダンス特性を解析した.主要な結果は以下の通りである. 1.インピーダンス調節能力評価法の開発: 人間の随意的なインピーダンス調節能力を実験的に評価するためには,被験者に手先インピーダンスの目標値を明示し,この値を実現するようにインピーダンスを調節させればよい.そこで,ダイレクトドライブ型メガスラストモータ(日本精工(株))を用い,被験者の手先インピーダンスを計測しながら被験者に目標インピーダンスを表示可能なインピーダンス・トレーニングシステムを開発した.そして,健常者であればかなり高い精度で自らのインピーダンスを随意的に調節できることを実験的に明らかにした. 2.脊髄反射系の感度変化と筋インピーダンスヘの影響: 1で開発したインピーダンストレーニングシステムを用いて仮想的な作業対象物を模擬し,作業対象物のダイナミクスが筋インピーダンスや脊髄反射系の感度にどのような影響を与えるかを実験的に解析した.具体的に取り上げた運動はテニスである,ボールやラケットの力学特性を変化させて被験者の手先のインピーダンスを計測した結果,残念ながら脊髄反射系の感度変化を実験的に証明するには至らなかったが,(1)被験者は実際の作業を開始する前に腕のインピーダンスを調節していること,(2)インパクトの瞬間に大きな衝撃力が発生するような場合には手先の剛性が増加すること,(3)ラケットの粘性が低く滑りやすい場合には自らの手先粘性を大きくして系を安定に保とうとすることなどの事実が明らかにすることができた. 来年度は,小脳疾患患者を被験者にして,健常者との差異を明確にするとともに効果的なリハビリ装置を実現できればと考えている.
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