研究概要 |
今年度は人工現実感技術を利用したバーチャルスポーツシステムを新たに開発し,小脳疾患患者による運動リハビリテーションを試みた. 【1】バーチャルスポーツトレーニングシステムの開発: 前年度開発したダイレクトドライブ型メガスラストモータ(日本精工(株))を用いた仮想スポーツシステムを開発した.対象とした運動はエアーホッケーである.このシステムは,(1)被験者の手先の運動からマレットとパックの運動を計算するコンピュータ,(2)コンピュータグラフィックを用いたフィードバックディスプレイ,(3)被験者に力感覚を提示する力ディスプレイからなる.以上の実験装置を新たに開発するとともに,(1)力感覚提示ハンドル部のインピーダンス制御の精度確認を行い,さまざまなインピーダンス特性を被験者に提示できることを確認した.また,(2)運動中の健常者の手先インピーダンス特性を計測し,被験者が前後方向と左右方向のインピーダンスを作業環境に応じて変化させていることを明らかにした. 【2】小脳疾患患者によるトレーニング評価: 開発したトレーニングシステムを用いて小脳疾患患者によるトレーニングを試みた.ビデオ撮影(ソニーTRV50,WV-DR5)による動作解析,アンケートによる官能評価を2名の患者に実施し,力感覚提示ハンドル部のインピーダンス特性に対応して被験者の感覚・知覚特性が変化することを明らかにした.被験者は対象物インピーダンスや作業の目的に応じて手先の運動を変化させており,感覚・知覚と運動の関連性を強く示唆された.この感覚・知覚特性(インピーダンス知覚)は,小脳疾患患者のためのリハビリテーションシステムを構築する際の基礎データとして非常に重要であると考えている.
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