本研究は、(1)大ひずみの繰り返しを受ける鉄筋の、塑性座屈を含めた力学的挙動を把握し、これを、有限要素法等によるRC構造物の解析に応用できる形にモデル化すること、また、(2)座屈域で繰り返し載荷される鉄筋の破断条件を明らかにすること、を目的としたものである。 (1)に関しては、まず、鉄筋をはり要素でモデル化し(ファイバーモデル)、有限変形理論に基づく有限要素法解析により、繰り返し応力を受ける鉄筋単体の挙動を検討した。さらに、これらの解析結果に基づいて、任意の応力履歴下で座屈した鉄筋単体の一軸応力〜平均ひずみ関係を提案した。提案した履歴モデルは、比較的簡単な形式で表されており、圧縮応力下の座屈挙動、座屈後再引張り時の挙動を含めて、任意履歴下の挙動を適切に評価できるものである。 (2)に関しては、まず、油圧チャックを備えた疲労試験器を用いて、D19異形鉄筋の塑性域の引張変位から座屈域の圧縮変位の繰り返し載荷試験を行って、鉄筋の破断条件を検討した。塑性域、座屈域における鉄筋の変形を精度良く計測することは容易ではない。ここでは、試行錯誤の末、特殊なアタッチメントとフレキシブルな細いスチールストランドを用いる変形測定方法を開発して用いた。鉄筋の固定長を18φ(φ:鉄筋直径)、12φ、6φとし、強制変位の振幅を23種に変化させて、約100体の鉄筋の破断実験を行って、破断までの繰り返し回数Nと、鉄筋固定長、平均圧縮ひずみ、および平均引張ひずみとの関係を統計的に明らかにした。
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