研究概要 |
本研究は,既設道路橋の耐震補強優先順位の決定法に関する基礎的な研究として,震後の道路閉塞の予測手法について検討するとともに,それを考慮したより合理的な既設道路橋の地震防災上の重要度評価システムの構築を試みたものである.まず,1995年兵庫県南部地震時の神戸市長田区の建物倒壊による道路閉塞状況(閉塞率32.5%)ならびに各道路区間(リンク)の属性(車道幅員,歩道幅員,リンクの向き,沿道建物数,沿道建物全壊率)を,住宅地図,災害現況図,阪神淡路大震災航空写真集等から目視により調査し,道路閉塞の有無を目的変数,各リンク属性を説明変数としてマハラノビスの距離による判別分析を行った結果,判別的中率は86%であり比較的精度がよいことが分かった.また,各説明変数の判別的中率への寄与度は,沿道建物全壊率が最も高く,リンクの向きと沿道建物数は比較的低いことが分かった.次に,この道路閉塞の判別式を既存の「既設道路橋の地震防災上の重要度評価システム」に組込み,道路閉塞を考慮したネットワーク解析に基づく重要度評価が可能なシステムに拡張した.この評価システムの妥当性を検討するために,長田区と同様に比較的古い木造建物が多い徳島市中心部を対象とし,中央構造線の徳島県における東半分(約50km)を震源とする直下型の想定地震(M7.7)に対する既設道路橋の地震防災上の重要度評価を行った.この場合の徳島市の平均建物全壊率は約46%(地震被害想定支援マニュアル),また,評価対象とした中心部の道路閉塞率は11.5%と推定された.この道路閉塞を考慮したネットワーク解析の結果,既設道路橋の地震防災上の重要度に及ぼす道路閉塞の影響は比較的大きいことが分かった.今後,同時補強橋梁数を任意に設定し得るようにシステムを拡張する必要がある.
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