本研究では、平成13年度〜平成14年度の2ヵ年にわたり、衝突を受ける橋梁スラブの衝撃応答に伴う衝撃音の伝播特性について、実験的および解析的に検討を行い、以下のような研究成果を挙げている。これらの内容の一部は、学会誌等に発表している。 (a)球体の衝突を受ける平板から生ずる衝撃音の発生機構と音響特性 平成13年度には、平板の衝撃応答解析から、衝撃応答の発生機構と曲げ波の伝播特性について明らかにしてきた。また、平成14年度は、音響実験により、衝突球を受ける平板から発生する衝撃音の発生機構につて明らかにしている。衝突音は、衝突球の接触に伴う板の局所変形に関係する初期パルス音、曲げ波の伝播領域の音と残留音(減衰自由音)から構成されている。衝撃パルス音は、平面波の性状を示し、平板の速度応答と相関性が強い。一方、残留音は平板の振動特性と関係し、周波数スペクトル解析から求めた残留音の卓越周波数は、平板の振動数と非常に良く一致している。比較のために、平板の加速波形から求めた振動スペクトルの卓越周波数と比較してみたが、非常に良く一致する結果を得ている。この研究成果は、衝撃音の計測より、平板の振動特性がかなりの精度で推定できることを裏付けている。 (b)球体の衝突を受ける平板から生ずる衝撃音の音質評価法 材種の異なる球体を衝突させた同一の平板から発生する衝撃音は、異なった音質に聞こえる。このような衝撃音の音質の相異を表す評価指標について検討し、定量的な衝撃音の音質評価法について提案している。 ここでは、以下の3つの評価指標を適用する。(1)周波数スペクトルに現れる卓越周波数の分布特性、(2)周波数スペクトルの卓越周波数のピーク値を線形回帰分析して求められるスペクトルエンベロープの勾配(dB/kHz)および(3)周波数スペクトルの時間的変動を3次元的に可視化した周波数スペクトルグラム。これより、高域周波数のスペクトル構造に顕著な差が見られ、またスペクトルエンベロープの勾配を用いれば、平板や球体の材種の相異が定量的に識別できる。また、音響スペクトルグラムを用いれば、各周波数別にスペクトルの時間変動を表わすので、その分布性状や減衰性状から音質評価が可能であり、また、打音非破壊診断の定量的評価への応用が期待できる。
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