本研究は、産業用X線CTスキャナを用いて、異なる圧力下における混合土中の透水現象を可視化すると共に、その透水現象の定量的評価を目的とする。試料は粘土とセメントおよび気泡を混合した気泡混合処理土を対象とし、まず現象の可視化をするために熊本大学工学部が章有する産業用X線CT装置内で実施可能な専用透水試験装置を開発する。またその装置を用いて試料中の透水現象の時間的変化をX線CTスキャナで非破壊検査し、得られた断面画像やその断面画像を重ね合わせて再構成した3次元画像により現象の可視化を行う。また、それらを用いた画像処理解析を実施し、現象の定量的評価を試みるものである。 昨年は、装置の開発およびその検証を主として実施したが、以下に本年度の成果についてまとめる。 (1)昨年開発した透水試験装置を用いて種々の圧力下(1気圧と3気圧)における混合土の透水現象を可視化し比較検討した。 (2)本実験結果を定量的に考察するために、局所単純平滑化や二値化等の画像解析手法を用いた混合土の画像解析手順の開発を行った。ここでは、CTデータの統計的性質を用いて透水した領域とまだ達していない領域の境界(しきい値)を決定する方法を開発し、これを用いて、最終的には一般に用いられる透水係数を算出し、その値の妥当性を示すことで本手法の有効性を示した。 (3)上記に加え、今後汚水の地盤内浸透等の環境問題への応用を考え、密度の異なる流体(ここでは造影剤としてKI(ヨウ化カリウム溶液))が混合土中にどのように拡散していくかという点についても追加実験し、上記と同じ方法を用いて、現象の可視化とその定量的評価としての拡散係数の同定に成功した。
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