研究概要 |
資源循環型社会が進む中,「建設発生土」の再利用が進んでいる。昨年度建設工事で利用された土砂のうち,約54%が再利用材料であった。しかし,建設発生土のうち河川などからの浚渫土や建設汚泥と呼ばれるものはその有効利用がほとんど進んでいない。建設汚泥に至っては産業廃棄物に指定されるため,再利用率が1割にも満たない。これらの汚泥は細粒分を非常に多く含む泥水状のスラリーであり,脱水処理によって河川築堤や土地造成などの材料として利用することができる。脱水処理には様々な方法があるが,本研究では浸透圧密を利用した方法を考案し実験を実施した。今年度は,載荷圧力差の違いが脱水性能に及ぼす影響について検討した。 浸透圧密実験は圧密容器(内径10cm,高さ15.4cm)内で軸方向に上方から下方へ圧力水を浸透させることにより,浸透圧力で容器内の試料を圧密させるものである。圧密終了後得られた脱水ケーキを採取し,上下方向に対しおよそ10層に分割して各層の含水比を測定した。試料には2種類の建設汚泥スラリー(細粒分含有率=試料1:76.6%,試料2:88.8%)を使用し,それぞれに対し載荷圧力差を4ケース(40,60,80,120kPa)設け,合計8ケースの試験を行なった。 実験条件による脱水性能の相違については,同じ圧力差では底面に近いほど供試体内の同じ高さでは圧力差が大きいほど脱水ケーキの含水比が小さく,脱水性能の高いことが分かった。試料の違いによる脱水性能の相違については,細粒分が多い試料2の方が試料1より高い脱水効果を示している。フィルタープレス等の代表的な脱水処理方法と比較した結果,比較的低応力下でも浸透圧密によりある程度の脱水効果が得られることが分かる。 高い圧力を作用させるにはプラント設備が大型化され,またエネルギーコストも大きい。従って目的に応じた処理方法を採用する必要があり,浸透圧密による脱水方法は有効である。
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