第三紀に堆積した泥岩材料は、セメンテーション作用の発達によって安定した組織形態を形成している。しかし、プレート境界にある地域の地盤特性は、地殻変動により大きな応力を受けており、セメンテーション作用と応力履歴の双方を想定する必要がある。また、応力履歴の大きさや受ける時期がその後の強度・変形特性に影響を与えることにも考慮すべきである。 本研究では、セメンテーション作用と応力履歴を受けた地盤の力学特性を明らかにすることを目的にしている。実験は泥岩をスラリー状にした試料を用いて、応力履歴とセメンテーション作用を組み合わせた供試体を作製し、一軸、三軸圧縮試験を実施した。今年度は、セメンテーション作用をセメントで代用した供試体を作製するため、4種類の混合条件の供試体を作製し、養生2、4、8週後に一軸圧縮試験を行い、適切な混合および養生条件を決定した。作製した供試体は縦割モールドに入れて三軸セルにセット後、セメンテーション作用による強度を超える高い垂直応力(1MPa)を与えた。セメンテーション作用と応力履歴を与えた供試体の力学特性を明らかにするために、過圧密な側圧条件で圧密排水せん断試験を実施した。その結果、最大強度線には応力履歴の影響が確認できた。また、せん断初期の応力〜ひずみ関係からは降伏応力が求まり、これらを集約した降伏曲面の形状は、実験個数が少なく明言はできないが、セメンテーション作用のそれとは異なる応力履歴を受けた場合の形状が予想できた。今年度は固化後に応力履歴を与えたが、固化前に与えるケースも実施し、両者の比較から応力履歴を受ける時期の影響が明らかにする予定にしている。また、作製条件の違いによる力学特性を明確にすることで、地盤の形成過程の相違による応力解放の影響を明らかにする。
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