プレート境界付近に存在する地盤は、地殻変動により大きな圧力を受けることが予想される。本研究では、応力履歴を受けた泥岩地盤の力学特性を明らかにするため、スラリー状にした泥岩試料にセメントを混合して、人工的なセメンテーションを発達させた供試体を作製し、これに応力履歴として載荷時期の異なる圧力を与えたものを用いて三軸圧縮試験を行った。具体的には、乾燥土質量に対して、20%のセメント量と、110%の含水状態の試料で供試体を作製し、打設から1日目、28日目に三軸セルに供試体をセットし、7日間を要して軸応力1.37MPa、側方応力0.69MPaを載荷した。それぞれの圧力条件を与えた供試体は、養生5週間を経過した時点で三軸圧縮試験装置にセットして、せん断試験を実施した。また、圧力条件の影響を調べるために、ここでは圧力を与えない供試体についてもせん断試験を行った。 応力履歴を与えた供試体の降伏曲面の形状は、セメンテーション作用のみを与えたそれに比べて拡大しており、セメンテーションの発達後に応力履歴を与えた場合の降伏曲面の状況は、圧力条件に依存した形状であった。また、セメンテーションの発達前に応力履歴を与えた場合の降伏曲面の形状は、セメンテーションの発達後に応力履歴を与えたものに対し、おおむね相似形に拡大しており、応力履歴はセメンテーションの発達後も影響を及ぼすことが明らかになった。破壊基準に関して、セメンテーションの発達後に応力履歴を与えた場合の最大強度線と残留強度線から求められる過圧密領域は、セメンテーションの発達後に応力履歴を与えたものと比べて、若干拡大の傾向を示していたが、明確な相違は確認できなかった。 過去に受けた圧力の大きさや時期が、泥岩地盤の力学特性に影響を与えていることが明確になった。このことより、泥岩地盤の設計や施工には、地質年代や地質的な履歴を考慮すべきであると考えられる。
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