堆積軟岩の切土斜面の崩壊や堆積軟岩の盛土が崩壊・沈下する問題の原因に、岩の乾湿繰り返しによる砕屑化や湿潤によるスレーキングがある.土と同様、水分の変化に伴い、サクションの増減が岩の内部で生じている.本研究では、岩の水分の変化をサクションというエネルギー除荷による変化として捉え、砕屑化やスレーキングといった現象について調べることを目的とし、岩のマトリックサクション計測法の提案(砂岩および泥岩)を行ってきた.さらに、泥岩のスレーキングについて湿潤過程の水分特性曲線からの膨潤圧との関係、日本道路公団による岩の耐久(スレーキング)試験によるスレーキング率、研究分担者である佐藤らの粒度試験による風化度に用いられる負の二項分布のパラメータを用いて乾湿による繰返しサクション負荷による影響について検討を行っている。得られた結果を以下に要約する。 (1)砂岩・泥岩・黒色片岩に対する保水性試験の方法を提案した。 (2)砂岩・泥岩・黒色片岩の湿潤過程の水分特性曲線を得ることに成功し、空気浸入値はそれぞれ、約2.7kPa、約1.2MPa、0.9MPa程度であることが得られた. (3)無拘束の状態である場合、泥岩は、サクションが約10MPa以下になるとがスレーキングにより亀裂が生じる. (4)泥岩の剥離が生じた時のサクションと膨潤圧とがほぼ同じ値を得る結果となり、モンモリロナイトによる浸潤膨張による膨潤圧とサクション拘束の平衡がくずれ、剥離が生じたものと推察された. (5)繰返しサクション負荷によるサクションエネルギーを累加サクションとして考え、スレーキング率や負の二項分布のパラメータの関係を示し、岩種による風化の程度の違いを明らかにした。
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