本研究の目的は、山はね現象のような突然起こる破壊を予測することにある。電位の一つの特徴は変位計測より明確に破壊現象を把握することができると思われ、山はね予測などに大変重要な計測手法になりうると位置付けることができる。本研究では、結晶から岩石までの様々な岩質材料を対象として、変形過程における電位差の変化に関する実験を行った。その結果、岩質材料の破壊とすべりによっても電位差の発生が見られることが明らかになった。さらには、圧電鉱物を含まない岩石においても電位差の発生を観測した。破壊との関係を明確にする為に、AEの計測も行い、電位差のパルス的な増加(SES)が岩石の破壊や不連続面の進展と密接な関係にあることを確認した。 実験結果から明らかになった知見を以下に示す。 ・実験結果から、岩質材料の変形や破壊およびすべり変形時に電位差が発生することが明確になった。また、圧電鉱物を含まない岩石においても電位差の発生が観測された。 ・発生する電位差の大きさは、鉱物の圧電効果特性、および変形やすべりによって生じる運動量の大きさに依存する。 ・最大の電気信号は、一軸圧縮強度の75-85%の応力レベルで観測された。このレベルは大まかに言って岩質材料の進行性破壊が始まるレベルと考えられ、このことから、電位発生挙動と進行性破壊との関連が予想される。 ・クリープ破壊前にAEの発生が観測されているが、その時点かそれ以前に電位差の変化が現れることが明らかになった。このことより、電位差計測がAEに代わる破壊予測手法になりうるということが証明されたと考える。
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