本研究の目的は、岩盤の破壊現象、なかでも特にクリープ破壊の時期や規模の予測を行うことにある。今までは、このような破壊の予測にはアコースティック・エミッション法(AE法)が用いられることが多い。しかしながら、多額の費用がかかることや、センサーの設置場所の選定など問題も多く抱えているのが現状である。そこで、本研究では、岩石が破壊する際に電位差が生じることに着目し、電位葦を計測することでAEに変わる破壊予測ができないか検討してきた。 電位差の研究は、BAN法に代表される地震予知の分野で研究されてきた。電位が生じるメカニズムに関しては、未だ、明確な理論はないが、圧電鉱物説などのいくつかの説が提案されている。 本研究でも、様々な岩石を用いて電位差の計測を行い、少なくとも圧電鉱物が存在すれば、明確に破壊時に電位差が発生することを確認できた。さらに、多くのクリープ試験を行う中で、クリープ過程中における電位の大きさの変化に一定のパターンが存在することを見つけた。 さらに、クリープ試験中に微小亀裂の進展が生じても、変位には変化が現れないが、AEおよび電位差には大きな変化が生じ、容易に亀裂の進展が認識できることが確認できた。 また、破壊の前兆としての挙動の変化は、電位差の方がやや早い傾向があるが、電位の乱れが多い場合には、前兆との識別が問題になることがある。 今後、現場への適用を考えた場合、自然界に存在する迷走電流などとの識別やより正確に微弱な電位を計測できる電極の開発などが必要となってくるものと思われる。
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