研究概要 |
1.山地河川には谷幅の数倍規模の河床起伏が存在しており,多くの場合網状流路の拡散と収束をともなっている.これらの形態の成因,および形態と土砂移動との関連を明らかにするために,幅1.2m,長さ10mの水路に最大粒径1.5cm,および3cmのTalbot型粒度分布砂礫を敷き詰めた移動床実験をおこない,以下の成果を得た. (1)水路中央に直線溝を切り,複列砂礫州の発生条件で通水した結果,水路幅(谷幅)いっぱいに広がる複列河道が形成された.この後に数分の一流量を通水することにより,中規模河床波(流路幅数倍スケールの交互砂礫州),小規模河床波(水深数倍スケールの礫列・礫段)の重畳的発生が生じ,自然河川の形態に酷似する形態が再現された.これにより,谷幅規模河床形態の成因が大流量による砂礫州の形成によるものと推定された. (2)大流量によって形成された複列砂礫州は,その後の小流量通水時において,分岐点から下流にかけての流量集中により特に湾曲部において大きな低下侵食を受ける.この現象によって生じた流砂は次の合流点においていくぶん堆積し,合流・分岐点を上流側に移動させるものの大部分が最下流部にまで運ばれる.したがって,大流量時形成砂礫州はその後の流れに対する土砂供給源になっており,砂防学における不安定堆積土砂とみなすことができる. (3)複数流路が集中合流し続いて分岐する接地点の変動は,下流側の浸食・堆積形態を決定づける重要な役割を果たしている.この場所で,右岸側あるいは左岸側流路に流量が交互に振り向けられる交番現象が認められた. 2.1.(3)の現象を抽出しその機構を明らかにするための対称分岐水路実験をおこない,以下の成果を得た. (1)分岐部での主流路交番現象は,分岐部上流における交互砂礫州の影響を強く受けて発生する.しかし,砂礫州半波長が前進することによって位相の逆転が生ずるわけでなく,砂礫州転向部における微妙な流れの向き方が原因している. (2)実験中に交互分級波が発生しており,これが交番現象のきっかけを生んでいる可能性がある.
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