研究概要 |
山地河川には谷幅の数倍規模の河床起伏が存在し,これに関わって複数流路の分岐・合流が認められる.本研究は,同河床形態の成因およびその土砂流出への影響の解明を目的としている.昨年度は実験により,同形態が谷幅全体を流れる大流量時に形成された複列砂礫州に他ならないことを見出した.このとき,中小流量負荷実験において複数流路が集中・合流した後再び分岐・分散する「節」地点の存在が確認された.同地点では流れが右側あるいは左側流路に交互に集中し,それに伴って下流側の土砂流出量が変動する(以後,流路交番現象).今年度は,土砂流出を支配する流路交番現象を解明するためY字型分岐水路を新たに作製し,左右分岐流路の河床高・流量・流砂量・流砂粒度分布の時間変動を調べた.これらの実験および解析によって以下のことが明らかになった. 1.典型的な交番現象では分岐流路の片側が完全に閉塞し,もう一方の流路に全流量が流れるようになる.しかし,流砂の集中によりその流路が閉塞し始め,大部分の流量がふさがっていた流路の堆積砂礫を掃きだして閉塞側を流れるようになる.堆積砂の掃きだしに伴い,流砂量が大きく変動する.一種の振動現象であるが,減衰していく傾向が認められる.主流時の流砂の粒度分布は初期河床材料に比して粗め,非主流時のそれは細かめになっており分級が生じている. 2.流路交番現象は,分岐上流水路において交互砂礫州が発生している場合にのみ生じ,他の形態では起こらない.しかし,交互砂礫州の流下に伴う位相の逆転が交番現象の原因ではない. 3.分岐部上流交互砂礫州により,流量(流砂量)が一方の側へ強く偏り続けることが交番現象の原因であり,このもとで片側流路の閉塞の誘発,他流路への流量集中,その流路の閉塞が繰り返される.
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