研究概要 |
水循環過程において土壌内の保水量変化は流出,蒸発散量に重要な影響を与える.平成13年度は著者が従来から研究を進めている「異球径粒子モデル法による多孔質体の微視的構造解析」をより発展させ,球形モデルによる土壌水分算定法の理論的解析手法の確立を行った.本手法の特徴として,土壌内保水量は土粒子接合部において保持されるリング水が卓越しているとの仮定から間隙率と粒径分布のみを既知とし,土壌水分特性曲線算定法を導き出している点にある.本手法はリング水が独立して存在するとの仮定に基づいているため,新たに3球モデルを考え,リング水が土粒子接合部で独立して存在する理論的条件を行った.得られた土壌水分曲線は比較的低含水率の領域のみが対象となるので,全保水域に対する土壌水分特性曲線を得る方法として,広く砂質土などに用いられるBrooks&Corey式のパラメータ値の決定法を本手法を用いて行う方法を提示した.提案されたモデルの妥当性を検討するため篩い分けされた試料と篩い分けしていない試料の2種類の硅砂による吸水実験の値と比較したところ,本手法で得られた土壌水分特性曲線は実験値とほぼ同様の傾向を示し本モデルの有用性が示された. また,平成13年10月より常呂川水系仁頃川の富里ダム流域の支流に試験地(8.4ha)を設け,土壌水分(6箇所),地温,気温,水位,雨量,放射収支量等の通年観測を開始している.この観測は平成14年度も継続して行い,土壌水分量の変化が熱収支量にどのような影響をおよぼすか検討を行う予定である.
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