研究概要 |
これまでの数値解析により,孤立波は弾性浮体下を伝播する間で分裂し,分裂波は浮体の曲げ剛性,質量及び波浪条件によって,前方分裂(分裂波は孤立波本体の進行方向の前方に現れる),前後分裂(分裂波は孤立波本体の前後両方に現れる)及び後方分裂(孤立波本体の後方のみに現れる)の現象が見出された.分裂波の発生メカニズムを解明するため,まずその第一段階として,前方分裂の発生に関する模型実験及び数値解析を行い,実験と数値計算の結果に基づく詳細な検討を行った. 模型実験では,前方分裂波が発生する長さ10m,幅0.78m,厚さ0.02m,曲げ剛性が異なる2種類の模型浮体を作成し,波高及び水深を変化させて実験を行い,孤立波が浮体下を透過する際の浮体の弾性変形及び浮体底面に作用する圧力を計測した.また,数値解析では,模型実験と同様な条件を用いた数値計算を行い,実験結果と比較することにより,研究担当者らが開発した境界要素と有限要素の時間領域接続解法の有効性を検証した. 浮体変形の位相速度と圧力の伝播速度の関係を検討することによって,前方分裂の発生機構を考察し,得られた主な結果を要約すると以下の通りである. (1)本実験の条件下では,圧力の伝播速度は浮体変形の位相速度より速いことが分かった. (2)圧力の伝播速度と浮体変形の位相速度の相違により,孤立波本体の前方に作用する圧力は進行距離の増大に伴い発達し,分裂波が発生される.それは前方分裂の発生の要因である. (3)一定の長さを有する浮体下では,圧力の伝播速度と浮体変形の位相速度との比はある限界値を超えると分裂波が生じる. (4)孤立波は一定の長さを有する浮体下で分裂しなくても,浮体の長さが充分長いであればいずれ分裂する.
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