今年度は、前年度購入したクロロテックを前年同様、秋から春にかけて佐賀大学有明海観測塔へ設置し、湾奥部における水温、濁度、クロロフィルなどの変動特性の把握に努めた。この報告書執筆の段階でまだクロロテックの回収は行っていないが、前年度の観測結果によれば、濁度が特に大潮の潮流が速い時期と相関が高いことやクロロフィルが降水後の日照と深く関係していることが時系列的に把握できた。また、衛星画像と同期した現地観測も実施し、多項目水質計による測定や透明度の実測、採水後のクロロフィル濃度の測定を行い、衛星画像から推定される水質分布の精度をより高めるための基礎調査を継続して行った。また、沿岸各県が過去30年近く継続して調査を行ってきた浅海定線調査の資料を入手し、地理情報システム(GIS)を用いて各年各月毎の水質の推定分布を可視化し、有明海の季節的ならびに空間的特性を考察した。例えば、透明度は湾奥の方が低いが、冬季は降水量が少ないため上昇する。夏季には各河川からの流入水の増加により透明度は低下するが、1994年や2000年の渇水の年はそれほど透明度の低下が見られなかった。また、塩分濃度についても同じ傾向が現れ、夏季に湾奥で塩分濃度は低下傾向にあるが、小雨の年はそれほど低下が現れなかった。また、1996年ころより秋から冬にかけての透明度が上昇していることや、12月の水温が1997年頃より上昇してきていることも確認できた。
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