沿岸部の都市開発などによる人間活動が有明海へ及ぼす影響を評価し、水環境モニタリングを行っていくことが重要になってきている。本研究では、沿岸4県の水質調査結果や人工衛星画像をもとにこれまで構築してきた海水の透明度・水面温度の評価手法をさらに拡張し、他の水質指標である塩分濃度やクロロフィルなどについても人工衛星画像を用いた評価システムの構築を行った。そのためにより詳細な水質観測として有明海の複数の水質指標について、1ヶ月以上の長期間の水質観測を行い、従来の問題点を解決することを試みた。 平成13、14年度の研究により、有明海の水質指標の中で透明度、水温などいくつかについては衛星画像による推定アルゴリズムを構築することができた。しかしながら、クロロフィルやDO、ブランクトン量などの指標については、衛星画像と同期した実測データが不足していることより推定式には問題が多く含まれ、改善を要することが示唆された。14年度実施した湾奥における現地調査のみによる回帰解析では湾中央、湾口などにおける精度が保証できないこともあったので、15年度は同時に2隻の船で現地調査を実施することとなった。 しかしながら、15年6月以降、Landsat7号の不調により最新の衛星データが受信されない状態が続いている。そこで、今年度については、これまで集めてきた衛星データならびに現地観測データをもとに各種補正方法の見直しを行い、従来の推定アルゴリズムがどの程度変わってくるのかを検証した。その結果、大気補正方法の違いにより分光放射輝度の値に違いが出てくることがより短波長域で生じることが分かり、より正確な大気補正を行うことで、モデル式の見直しを実施した。その結果、透明度、海水面温度、クロロフィル濃度、塩分濃度について、ある程度の精度で推定可能であることが明らかとなった。
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