本研究では、有明海における複数の水質指標について、従来の観測資料の整理ならびに独自の現地調査を実施することで、湾内の水質の面的なあるいは時間的な変動特性を把握すると同時に、衛星画像から水質指標を定量的に推定するアルゴリズム構築に向けて研究を続けてきた。 13年度は、藻類に関係するクロロフィルやpH、DO、塩分濃度などの水質の時間変動特性並びに空間性を把握するため、マルチ水質モニタリングシステム及びクロロテックを導入した。さらに、人工衛星ランドサットが飛来してくる日時に合わせて、毎月、上記センサを用いた水質観測・採水を実施した。現地水質調査結果並びに過去の浅海定線調査と赤潮対策調査結果のデータを用いて、衛星画像より水質(透明度、水温)の推定を行うアルゴリズムを開発し、ある程度の精度で有明海の水質を推定することが可能となった。 14年度は、前年度購入したクロロテックを前年同様、秋から春にかけて佐賀大学有明海観測塔へ設置し、湾奥部における水質の変動特性把握に努めた。観測結果より濁度が大潮の潮流が速い時期と相関が高いことやクロロフィルが降水後の日照と深く関係していることが時系列的に把握できた。さらに、沿岸各県が、過去30年近く継続して調査を行ってきた浅海定線調査の資料を入手し、GISを用いて各年各月の水質の推定分布図を作り、有明海の季節的ならびに空間的特性を考察した。 15年度には、これまで集めてきた衛星データならびに現地観測データをもとに各種補正方法の見直しを行い、従来の推定アルゴリズムがどの程度変わってくるのかを検証した。その結果、大気補正方法の違いにより分光放射輝度の値に違いが出てくることが、より短波長域で生じることが分かり、正確な大気補正によりモデル式の見直しを実施した。その結果、透明度、海水面温度、クロロフィル濃度、塩分濃度について、精度の向上が見られた。
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