研究概要 |
本研究では現在のトンネル内壁劣化監視システムを自動化し,効率的かつ安全なシステムの開発を最終目的とする.本年度の研究では,まず,はじめに,列車速度が劣化度推定で重要となる同一ひび割れ画像抽出に与える影響について検討を行った.本システムでは列車上部にラインセンサカメラを搭載しトンネル内壁を撮影するため,列車速度が高速になると,1ラインの走査から次の走査までの間にわずかな走査間距離が生じ,不連続なラインとなる.そのため正確なトンネル内壁面の展開画像を作成することはできない.そこで,任意の列車速度で撮影された不連続なラインから元のひび割れ画像を再現する補間方法を提案した.列車速度と,提案した補間方法を用いて再現された同一ひび割れ画像間の相互相関係数との関係を検討した結果,列車速度を60km〜140kmと変化させた場合でも,基準列車速度を100kmとした場合の相互相関係数は0.9以上と高い相関を示した.この結果,前年度に提案した劣化度推定方法で重要となる,同一ひび割れ画像の抽出を列車速度が異なる場合でも行えることが確認できた.次に,レーザ距離センサを用いた劣化診断方法について検討を行った.レーザ先端からトンネル内壁面までの距離データには劣化診断で重要となるひび割れ深さ,突起変状や段差などの成分のほかに,列車振動,レールの歪み,トンネル壁面の歪みなどの不要成分が含まれる.これら不要成分を除去し,突起変状や段差などの大きさを推定する,高速フーリエ変換を応用した劣化成分推定方法を提案し,実験システムにより得られた距離データを用い提案方法の有効性を確認した.
|