研究概要 |
本研究の最終目的は,現在のトンネル内壁劣化監視システムを自動化し,効率的かつ安全な新システムを開発することである.本研究で提案するシステムは車両上部に搭載したトンネル内壁の各種状態を測定する複合センサ,一時的にセンサ情報を記録する測定制御装置,そして主要な駅に設置するセンサ情報データベースと劣化度推定システムから構成される.本年度の研究では,トンネル内壁面の劣化度推定システムについて検討を行った.まず,複合センサより得られたひび割れのデータ,段差等の距離データから,劣化度と劣化進行度を求めるため,ひび割れと段差に関する3つの評価関数を提案した.すなわち,(1)ひび割れ長さ,幅,角度の線形和を用いたひび割れに関する劣化度を示す評価関数,(2)ひび割れ長さ,幅の時間微分値の線形和を用いたひび割れの劣化度の進行を示す評価関数,(3)段差の深さの線形和を用いた段差に関する劣化度を示す評価関数である.次に,実際に現場でトンネルの保守作業で用いられているトンネル保守マニュアルを参考にして,提案した評価関数に使用する重み係数および危険・要補修の判定基準についての検討を行った.さらに,前述の3つのの評価関数値を3次元グラフ上の座標値として表現し,劣化度を評価し,補修時期を推定する方法について提案を行った.最後に,実際に劣化が進み補修が行われた東海道新幹線の関ヶ原トンネルにおけるトンネル壁面展開図から,時系列的に3段階に劣化が進行するトンネル壁面展開図を作成し,提案手法による劣化度推定を行った.その結果,各段階において良好に劣化度推定を行え,補修時期も推定できることが確認できた.
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