地区交通においては、すでに様々な交通手段・利用者(以下交通モード)が限られた道路空間内に混在しているが、今後はさらに多様化した諸元・形態をもつ新しい交通手段の増加が予想され、道路交通の混乱は一層激しくなると考えられる。この解決のためには新しく「共存性」という概念を確立したうえで、各交通モードの位置づけを明確にし「交通モードの諸元・性能・形態」と「道路空間配分・デザイン」と「交通規則・マナーの確立」の三者が連動した交通社会の最適設計を考えていく必要がある。以上を背景とした本年度の研究成果は以下の通りである。 1.交通手段の諸元資料を収集・整理した結果、開発動向の特徴は小型化・電動化であり、自転車と原付バイク間、原付バイクと軽自動車間等境界上の交通手段が増加傾向にあるため、これによって発生が懸念される新たな交通問題を整理した。 2.ブレーンストーミングと観測調査から、世代別交通行動原理と、人間的要因を加味した7つの交通モード評価項目(予想外行動の頻度、よけ易さ、被視認性、自然発生音、威圧感、情報受け取り能力、意思伝達能力)を抽出した。 3.新たに考案した逐次改良型デルファイ法を用いて、上記7つの交通モード特性値の評価を行い、これまで用いられてきた諸元値(寸法、重量、速度等)と合わせて全59交通モードの評価値一覧表を作成した。 4.多様化する交通モードの共存性を包括的かつ理論的に分析するために、設定した諸元値・特性値をクロス分析する共存性分析ツールと、これを共存性探索プロセスに位置づけた総合的な共存性検討プロセスを開発した。 5.開発した共存性分析ツールと検討プロセスを用いて共存性の論点を整理し、この論点に対して6つの道路パターンで、具体的な交通モードの共存条件の試案を作成した。
|