研究概要 |
急曲線に続く緩和曲線を低速で通過する鉄道車両が脱線を引き起こす主な要因は、輪重のアンバランス、レール車輪間に働く大きな摩擦力などであるとされているが、実際の脱線例から推定される一定の数値を与えた従来の走行シミュレーションでは、輪重アンバランス、レール・車輪聞の摩擦係数に非現実的な大きな値を用いなければ脱線現象が再現できず、この脱線過程を充分に説明することができない。本研究は,レールの動的変位の影響や慣性座標の導入、さらに輪重のアンバランスの影響を従来の走行シミュレーションに加えることによって、新たな走行シミュレーション解析手法を開発しようとするものである。すなわち、車輪とレールの接触効果をより高精度に解析することによって、実際の現象の再現を試みようとするところにある。今年度の研究は、走行シミュレーション解析モデルの深度化に関する検討であるが、基準座標が地上側に置かれていた従来の方法を車両側に移し変えてることにより、複雑な機構をもつ車両部分の計算式がより簡潔になり、数値計算上の効率化を図った新しい走行シミュレーション解析システムの開発が順調に進んでいる。中間的な成果としては、輪重アンバランス、レール・車輪間の摩擦係数に、実在値を用いても、実際に起こったように車輪がレール上に乗り上がり、フランジ走行を数メートル続け、最後に脱輪するという現象の再現が可能となった。今後は、この新しい解析システムにより、種々のパラメータ解析による脱線要因の広範な解析を行い、急曲線部の車両脱線を最も忠実に再現することができる要因とその組み合わせを見いだし、合理的な脱線防止策を提案する。
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